鹿児島の団地の今に向き合う鹿大生たち

鹿大生の写真

有村駿吾・井尻敬天・上山将範

●代表:有村 駿吾

理工学研究科工学専攻建築学プログラム2年

●共同代表:井尻 敬天

理工学研究科工学専攻建築学プログラム2年

●共同代表:上山 将範

理工学研究科工学専攻建築学プログラム2年

鹿児島大学に、郊外の住宅団地で地域活性化に従事する学生がいるらしい。そんな情報を得た筆者は、迷わず取材のアポを取った。そもそも、なぜ鹿大生が団地に…?そんな疑問を胸に、今回はかごだんSTEP展開プロジェクトの代表3人にお話を伺った。

Q. かごだんSTEP展開プロジェクトについて教えてください!

有村さん:去年からはじまったプロジェクトで、鹿児島市の郊外住宅団地(かごだん)を舞台に、鹿児島大学の学生たちと団地住民、行政が一緒になってまちづくりをしようという取り組みです。このプロジェクトの目的は大きく2つあって、1つ目が ”団地内に気軽に集まれる場” を作るというものです。団地の軒先や公園など、団地にある”使えるけど使われていない空間”を利用して何かできないかということで、「展開型コモンズ」を使った取り組みを行っています。そして、もう1つの目的が団地間の情報共有を行うというものです。団地間ネットワークをどのようにして作るかっていうのをプロジェクトとしてやっていて、その一環で制作したのが「縁(よすが)」という冊子です。地域との関わりを構築していく上で大事な要素を段階的に踏みながら、これまで団地の方々とどのように活動してきたかを振り返ってまとめています。

「縁(よすが)」という冊子

Q. 「展開型コモンズ」というのは…?

上山さん:簡単にいえば、「木の箱」のことです。これを複数個並べたり組み合わせたりすることで、仮設的で尚且つ、その場に適した機能と形で場を生み出すという取り組みです。こういったものを団地内でのイベントの際に軒先や公園に置かせて頂いて、住民の方々に利用してもらうことで、団地に新たな場を作るのが狙いですね。

「展開型コモンズ」

Q. プロジェクト名に入っている「STEP」とは何なんでしょう?

井尻さん:地域活動やまちづくり活動など、地域に関わる活動(営み)を行うときって”度合い”があると思うんです。例えば、庭先をちょっと掃除するであったり、地域のイベントに参加するであったり、その地域の自治会に入るであったり…。その”度合い”をちゃんと捉えた上で、個々人に合った無理のないまちへの関わり方を提示していく必要があると思うんですよね。まずは、まちを”知る”。それからアイデアを巡らせて、それを発展させる。そして、実行に移す。そのようにしっかりと「STEP」を踏んでいこうという意味が込められています。

「STEP」の様子

Q. このプロジェクトに参加したきっかけは?

井尻さん:実は、やろう!と思って始めたことではないんですよ(笑)元々、研究室で団地に関わっていたのがきっかけなんですけど、僕らはあくまで建築学科の持続型地域計画の研究室に所属する学生なのにマンパワーとして駆り出されることが多くて…。若干自分たちの存在意義を疑ってたりもしてました。そして何よりこの活動を持続する体制が整っていなかったんですね。後輩たちにとっても楽しい活動であって欲しいし、自分たちにとっても持続的な活動でありたい。そういった経緯で始めました。やるべきだったし、やる必要があったんですよね。 上山さん:僕も、初めは研究室に帰ってきたらやってたので参加したという感じですね(笑)団地とは今までも関わってきていたので、愛着が湧いている部分もありました。

Q. 上山さんは休学されていたんですよね?

上山さん:そうなんです。ITベンチャーで長期インターンをやっていました。 有村さん:僕は、元々団地の研究をしようというので、団地に関するワークショップに参加してたんですね。住民の方々が何かをやっていくっていうのに、話し合いの段階から参加していて、色々と議論を交わす中で、団地の方々が想像以上に学生の意見を参考にしてくださったんです。自分たちってあくまでも団地外の人間で第三者の立場じゃないですか。なのに、対等に見てくださっているのが嬉しくて。団地をもっと盛り上げたいという気持ちが高まったのがきっかけですね。

Q. どんな時にやりがいを感じますか?

有村さん:地域の人と、一から何かイベントをするってなったときに、住民のような気持ちで話し合いに参加するんですね。成功したって思うときもあれば、もちろん失敗することもあって。でも、そういう経験を地域の方々と共有し合いながらやっているからこそ、達成感を味わえるというか。いろんな過程を通じてやりがいを感じていますね。 井尻さん:僕はちょっと違うかな。以前、地元住民の方とゴミステーションを作ったことがあったんですよ。完成したときは、多少の達成感はあったものの、正直なところ、ただただ「疲れた」って感じでした(笑)だけど、後日そのごみステーションが地域で使われている場面を目にしたとき、自分たちの行為が、地域の人たちの”暮らしの一部”になっているということに感動して。地域の当たり前になっているということをまがいなりにも体験できたことは良かったと思います。 上山さん:つまり、活動をしていく前にも後にも”やりがい”がある訳だね! 有村さん・井尻さん:ハハハ!上手くまとめたけど、まぁそういうことです!(笑)

Q. この先、どのような活動を行っていきたいですか?

井尻さん:最終的には、このプロジェクトは無くなってほしいと思っています。

Q. えぇ!それはなぜですか?

井尻さん:僕たちがやっている活動って、本来は団地の方々で企画して運営していくのが理想だと思うんです。だからこそ、現在行っている活動が団地にお住まいの方々のみでも自走するような形になっていけば本望ですね。 有村さん:そのためにも、まずは僕たちのやってきた活動を継続していきたいなと考えています。学生と地域の関わりっていうのをもっと発信していければいいなと思っているので、研究室の枠を超えて他学部の学生も含めて活動を行っていきたいですね。 上山さん:僕も、活動を継続しつつぼちぼちやっていきたいですね。みんな大学の授業だったり研究だったりやりたいことが色々とあるの思うので、無理せず自分たちのペースでやっていけたらなというのが正直なところです。


編集後記

「やるべきだったし、やる必要があった。」そんな言葉から、団地の今に向き合う鹿大生の決意が伝わってきた。他人事とは思えない、鹿児島の今、そして、これから。地域のリアルな課題と真剣に向き合う姿は、同じ大学生として奮い立たせてくれるような気持ちにさせてくれた。