日本語教師のキャリアから得た文化人類学研究

鹿大生の写真

村本茜

●所属

法文学部 院2年

●専攻

文化人類学

●趣味

ラップ、バリ舞踊

●職業

日本語教師

子供の頃から色んな国の民族に興味があった。これまで20数か国巡った私が、ピンときた場所。それが、スペイン語圏の国々、スペインやラテンアメリカだった。ハグして挨拶して、陽気でゆったりとしたラテン文化が自分の性格にあっている。大学の学部ではスペイン語を専攻したおかげで、現地の人々とお喋りができて、そこでの生き方に理解が深められた。就職活動ではスーツを着ることが何となく嫌で、卒業後はゲストハウスやUSJで働いてた。そこで、国際色豊かな人と話しながら日本語教師になることを決めた。社会人として鹿児島で日本語教師になっても院に行くことは諦めきれず、今私は鹿児島大学にいる。

Q. 現在、研究されている文化人類学のテーマ「在日ネパール人留学生生活戦略を活かしたネットワーク」を選んだきっかけは何だったんでしたか?

学部時代から院に進学したいとは思ってたんです。 その中で、このテーマで研究を進めたのは、日本語教師としてネパール人留学生と交流したことでした。異なる文化や価値観を持つ者同士、衝突することが多かったんですよね。一生懸命伝えているのに…なんで分かってくれないの?試験中に周りの仲間に助けを求めようとしたり、大きな単位でのお金の貸し借りが日常的に行われ ていたり、友だちがいるから、学費が安いからという理由だけで、進学先を選んだり…最初は衝撃的で、戸惑いや不満を抱えることが多かったですよね。 だけどネパール人留学生と学生生活を共にする中で、彼らの価値観を理解したいという気持ちがあったんです。ネパール人留学生と仲良くなったり、現地を訪れたりもしました。その中で、ネパール人にとっての助け合い精神は日本人よりも強いことに気づいたんです。「自分が困った時のために、相手を助けよう。」そんな相互扶助の考えが強くて、日本人だと渋ってしまうようなお願いだとしても受け入れなきゃいけないんです。例えば、家を建てようと思ったら村の人みんなが手伝う。そんな価値観が当たり前にあることに気づいたんです。この気づきから今回の研究テーマが生まれました。

海外の思い出の写真

Q. この研究を通して、伝えたいメッセージは何かありますか?

異なる国や文化の人たちは、私たちが持ち得ない価値観や技術、芸術性があること。この世界には「基準」や「正解」なんてないこと。 これを私に教えてくれたのは、ネパール人をはじめとする日本語学校の留学生たちでした。最初は理解ができなくても、よく話を聞いてみれば、 その背景にそれぞれの物語があります。せっかく出逢えた人なのだから、「自分とは違う」と感じて距離を置いたり、偏見で固めてしまったりするのはもったいないですよね。「新しい世界を教えてもらえるかも?」と、歩み寄って文化の壁にぶつかりながらも打ち解けていく過程を楽しめる人が増えるといいなと願っています。 どれだけ日々必死に勉強や研究、仕事をしていても、この世界は、まだ知らないことだらけです。そんな未知のことを発見し、読み解く作業は、苦しいながらも充実したものです。そこで得た知識や経験はいつか必ずどこかで生かされると信じてます。

ネパールでの写真

Q. 修士論文の執筆でお忙しそうですけど…日本語教師の仕事も両立させながら、ゴミコレというファッションイベントにもモデルとして参加されていますよね。こんなにも興味関心のあることに挑戦する原動力は何ですか?

私は誘われたことに対して、断るということを知らないんですよね(笑)でもしたいこと全てにフルパワーで、こなそうとするといつか限界が来てしまいます。なので、したいこと全てを少しづつ挑戦するようにコントロールしています。そんな生活が私にとって一番ストレスのない生活スタイルかもしれません。

Q. 修士課程を終えた先は何を考えていますか?

まずは博士課程への進学です。修士の2 年間っていうのは、私にとってあまりにも短く、限られていました。なので、博士課程でも引き続きネパール人留学生について調査して、論文執筆や学会発表にも積極的に挑戦しようと思っています。そして「やさしい日本語」の普及活動など、地域の外国人がより心地よく過ごせる町になるような取り組みをするつもりです。 もちろん日本語教師の仕事も続けていくつもりです。現場での仕事は研究にも活かされています。 留学生だけでなく、家族滞在や特定技能など、その他のビザで来日している非日本語母語話者の方々への日本語学習のサポートもするつもりです。

アートギャラリーの写真

編集後記

今回インタビューを行った場所は、村本さんが旦那さんと開いているアートギャラリー”Epikouros”。歴史を感じる古民家に世界各地の器やステンドグラス…ご夫婦2人がこれまでに見てきたアートをゆっくりと猫と一緒に楽しめます。 【住所】鹿児島県日置市日吉町吉利381 【営業時間】不定期(要連絡) 【電話番号】099-292-2822 【駐車場】あり